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★北朝鮮問題(2017年09月29日付)

最近、文春新書の「戦争にチャンスを与えよ」エドワード・ルトワック著 (奥山真司訳)を読んだところ、北朝鮮問題について書かかれた部分があり、 なかなか興味深かかったのでご紹介します。
エドワード・ルトワック氏は大手シンクタンク「米略国際問題研究所(CSIS) の上級顧問で戦略論の大家として有名な方です。「エドワード・ルトワックの 戦略論」、「中国4.0 暴発する中華帝国」などの著書があります。

1.戦略の世界では平時とはすべてが反対に動く。平時には、脅威を深刻なも のとして考えられないものだ。平時には脅威が眼前にあっても、我々は「まあ 大丈夫だろう」と考えてしまう。脅威が存在するのに、降伏しようとも思わず 、相手と真剣に交渉して敵が何を欲しているのかをしろうともせず、攻撃を防 ぐための方策を練ろうともしない。だからこそ、平和から戦争が生まれてしま うのである。脅威に対して何もしないことで、戦争は始まってしまう。
2. いま、北朝鮮に関して生じているのは、まさにこのような状況だ。 アメリカ、中国、ロシアは北朝鮮の核開発の阻止に関して何もしていない。韓国 は、直接に脅かされているのに、韓国自身何もしていない。彼らは北朝鮮に対し て抑止さえもしていないのだ。韓国は北朝鮮に何度も攻撃されているのに、 反撃さえもしていない。要するに、韓国は、北朝鮮の脅威が現に存在するのに、 何も行っていない。「降伏」も、「先制攻撃」も「抑止」も、「防衛」もせず、 「まあ大丈夫だろう」という態度なのだ。
3.北朝鮮の軍事関連の技術力は侮れない。根本的な意味で、日本やアメリカ 以上の底力を持っている。たとえば、イランは核開発に「北朝鮮の五倍もの時間 をかけながら、一発の核兵器に仏様な核物質さえつくりだせていない。 人工衛星の技術もない。要するに、北朝鮮の軍事開発力は、極めて危険な域に 達しており、真剣に対処する必要があるのだ。
4.日本には、「降伏」、「先制攻撃」、「抑止」、「防衛」という4つの選択 肢がある。「まあ大丈夫だろう」という態度だけは極めて危険である。
5.北朝鮮にたいする制裁は効果がない。

?他に選択肢がないのであれば、「降伏」も一つの立派な戦略的な選択だ。 北朝鮮が真に何を望んでいるかを聞き出し、経済制裁をすべて解除する。 祖国へ の朝鮮総連の送金に関する制限も解除し、金一族を讃える博物館を表参道に建て、 北朝鮮に最も美しい大使館を建てさせる。代わりに、日本政府は、北朝鮮に500 キロ以上の射程を持つミサイルの開発を止めてもらう。500キロ以上の射程の ミサイルは、国際的な「ミサイル技術管理レジーム」(MTCR)での制限の対象に なっている。またそれだけではなく、これは、幸いなことに偶然にも、朝鮮半島 の非武装地帯から下関までの距離と同じなのだ。これは北朝鮮に対する制裁をすべ て解除し、彼らに名誉を与え、国家としての彼らの存在を認めることで、500 キロ以上の射程のミサイルの脅威を取り除くという道だ。
?次の方策は「北朝鮮を攻撃する」というものだ。しかもこれは先制攻撃でなけ ればならない。核関連施設を特定しつつ、それらすべてを破壊するだ。ここで覚え ておかなければならないのは、北朝鮮のミサイルが、侵入の警告があれば、即座 に発射されるシステム(LOW)になっているかもしれない、という点だ。LOWとは レーダーからの警告に即座に反応することを意味する。そうなると北朝鮮を攻撃 すること自体に大きなリスクが伴う。 もし、北朝鮮を本気で攻撃するのであれば、空からだけでなく地上からの支援も 必要だ。韓国はそうした能力をもっているとされるが、もしそうなら、作戦敢行 の最も良いタイミングは、今夜もしくは明晩ということになる。しかし、いくら 能力があっても、それを使う「意思」がなければ、能力はなんの意味もなさない のである。
?「抑止」としては、日本が1000キロの射程の弾道ミサイルを持ち、そこに デュアルユース(民生・軍事両用)の核弾頭を搭載するのだ。ここで参考になるの は、冷戦期に欧州でソ連がSS-20を配備したときの状況だ。SS-20の配備に対し、 NATOはパーシングUミサイルシステムと同時に、巡航ミサイルも配備している。 日本が本土上にミサイルを配備できないのであれば、潜水艦に核弾頭を積んだ 巡航ミサイルを配備しても良い。
?「防御」はミサイル防衛によるものだが、どのシステムも完璧ではない。 迎撃率が95%でも完璧とは言えないからだ。北朝鮮が、核弾頭をミサイルに 搭載しようとしている現在、ミサイル一発の着弾ではあってはならない事態だ。 つまり、最高度の装備を揃えても、「防衛」という選択肢は十分ではないという ことだ。

いかがだったでしょうか。ルトワックは、私が日本政府に対して言えるのは 「何もしないのが最悪の選択肢で、以下の選択肢のうちのひとつを実行せよ」と いうことぐらいだ。と言っています。ただ、別の章で「同盟がすべてを制す」とも 言っていますので、上記の4つの選択肢がすべて困難である現状では、ロシアと の関係がキーになるかもしれません。その意味では、今回の選挙は安倍首相が 勝ってプーチン大統領との現在の関係を維持して欲しいと思っています。 安倍さん以外でプーチンと話合える人はいないでしょうから。

それから、訳者の奥山真司さんは「地政学ーアメリカの世界戦略地図」の著者です。 2004年の出版と古くなりましたが、地政学の歴史を学べるおすすめの本です。

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